暮らしの近くで健康に寄り添う医薬品企業として成長を目指す。
株式会社富士薬品
執行役員 生産事業本部 業務推進部長 江尻 茂一
新卒で株式会社富士薬品入社。現在は生産事業本部 業務推進部長として職務にあたる。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
薬のまち・富山から全国へフィールドを広げて。
富士薬品は配置薬販売業から始まった会社で、現在では医薬品製造、医薬品研究開発、医療用医薬品販売、そして全国にドラッグストア「セイムス」を展開する複合型医薬品企業として歩んでいます。
私自身は新卒で入社し、いくつかの部門を経験して、現在は富山市にある生産事業本部で業務推進部長を務めています。最初は製造工場の購買部門で、原材料の管理・発注を担当していました。当時の自分は、これから富士薬品で働いていくにあたって、「ものづくりの現場を知らなければキャリアを積んでいけない」と感じていて、4年目くらいから上司に製造部への異動をお願いしていました。ようやく念願かなったのは8年目で、そこから3年間、富山工場で製造を担当しました。
製造部門をひと通り経験したところで転機が来たといいますか、労務管理担当者が退職するということで、いまの所属である生産事業本部業務推進部に配属されました。しばらく務めた後、今度は社長から埼玉県にある管理本部へ来るように言われ、管理本部総務部に異動することになりました。さらに、1年半後には人事部へ異動。双方の部長として働くなかで学んだのが、自分ですべてやるのではなく、部下が仕事をしやすい環境を作ることの大切さでした。
社員たちがのびのび働ける環境づくりが自分の仕事。
富山にいたときはすべての仕事を自分ひとりで抱えて、誰かに頼るということをせずにやっていました。工場以外の部署を知らないですし、自分の力を過信していた部分があったのかもしれません。それが管理本部に異動すると、そこは自分の知らない世界だったわけです。配置営業やドラッグストアなどいろいろな事業部があって、各事業部へ提案・折衝・調整をするに際して、各事業部の事情や状況を把握しないと対応できず、異動間もない時は自分の範疇を超えていたんですね。
「自分はどうやって富士薬品の総務部や人事部をまとめていけばいいのか」と考えたときに、部下たちは専門性をもったプロフェッショナルなのだから、彼らがのびのびと働ける環境づくりをすることが自分の仕事だと分かったんですね。これは私にとって、とても大きな経験でした。
管理本部での勤務は会社の全事業について理解できたことに加え、社長に近いところで仕事できたことで、会社が目指す方向についても学ぶことができた、というのも大きかったです。採用の場面でも、富士薬品という会社としての説明をきちんと伝えられるようになりましたね。
一方で、富山で製造部門の採用に関わる際は私自身が製造に携わった実体験で話ができるので、相手に伝わりやすいという点もあります。当時、自分がものづくりの現場を経験したいと思ったのは間違っていなかったなと思っていますね。いまは採用の現場も若手に経験してもらい、後輩たちの育成に力を入れています。
歴代トップから学んだみんなと同じ目線で話すということ。
業務推進部総務グループというのは社長や先代社長、常務、工場長といったトップと接する機会が多い部署で、そのような方たちの話を聞けたことは、自分にさまざまな影響を与えたと思っています。
例えば、当時の常務にとって私は孫くらいの年齢でしたが、気さくに「仕事はどうだ?」「子どもの様子はどうだ?」と話かけてくる方で、仕事の話だけでなく、人生観なども聞かせてもらいました。まったく偉そうではないというか、部下の目線に降りて一緒に会話をできる人で、そうした人間性が素晴らしいなと思い、私も見習うべきだと感じていました。社長や名誉顧問も同じような雰囲気でしたね。
そうやって和やかな雰囲気を作ってもらい、のびのび仕事をやらせてもらったので、今度は私が部下たちにそういう環境を作ってあげなければいけないと日々思っています。仕事に多少のプレッシャーは必要ですが、一方で余裕がないと発想力は発揮できないと思いますから、変なプレッシャーは与えるべきではないと思いますね。
そして、相手に考えさせるということも大切にしています。私から答えを出してしまうと成長になりませんから、まずは自分で考えて、思い切ってその考えを言うように伝えています。その考えが合っている、間違っているということではなくて、そこから話し合いをしていけばよいわけですから。
それが定着してきて、総務のメンバーは「まず自分はこう思うけれど、みなさんどうですか」という話の進め方をしますね。本当に分からないときは、「分からないので教えてください」と言ってきますが、そういう時もどこが分からないのか尋ねながら相談にのります。常に、すぐに私が答えを出すことはしないようにしています。
守りに入るのではなくアグレッシブに変化していく力がほしい。
キャリア採用に関しては、部下を引き込めるか、周りと上手くやれるか、最後まであきらめずに粘り強くやれるか、といった人間的な部分を見ていきます。キャリアの場合、技術は持っていて当たり前だと思っていますし、いろいろな部門と関わりを持つ仕事なので、うまく協調して良い方向へ導いて、変化を生み出していける人材を求めたいです。
製造業はどこも同じだと思いますが、特に薬の会社は失敗してはいけない仕事です。そして失敗しないようにと思うと、みんな縮こまってしまうんです。しかし会社としては、もちろん失敗はしてはいけないけれど、そのなかでもこういうやり方がある、こういうことをやってみよう、という社内の変化に繋がる動きをしてもらいたいと思っています。
会社としても、全員に経営に参画してもらおうという狙いで、社員による「改善活動」にかなり積極的に取り組んでいます。例えば、コストを削減できたら、それは自分たちが会社に貢献したことになります。個人からは、小さなものも合わせると年間3,000~4,000件の改善提案が上がってきます。それに加えてチームによる活動もあり、富山工場では、30のチームが1年を通して自分たちで設定したテーマに取り組むということをやっています。
「利益貢献」「安全改善」「品質向上」「納期」などテーマはそれぞれで、発表会も行い、良いものには社長賞も出ます。発表は6分以内でやるのですが、動画を作ったり、ドラマ仕立てのプレゼンだったり、みんな凝っていますね。それも14年もの間、社員に受け継がれ蓄積していったことで、年々レベルが上がっています。こうした活動を通して、みんなで力を合わせてアグレッシブに仕事に取り組んで、失敗せずして会社を良い方向へ変えていってほしいと思っています。
これからも社員がチャレンジできる環境を整えていく。
商品力の強化や、営業力の強化など、製造として目指すべきビジョンがありますが、それには社員の成長が欠かせません。社員には、成長のためにさまざまな経験をしてほしいと考えていますし、本人の希望があれば、より柔軟なキャリアを提供したいとも思っています。
例えば、部門間のローテーションを積極的に行うことによって、そのような環境を作り出すこともこれから取り組んでいきたいです。実際に、通訳ポジションで中途入社した社員が、語学力を活かして、海外工場のサポートや技術営業のような業務にチャレンジし、活躍しているような例も出てきています。社員には遠慮せず、やりたい仕事に対して、どんどん手を挙げてチャレンジしてほしいですね。
また、社員が働きやすい環境を作ってあげたいという思いは、私だけでなく上司はみんなが思っていることです。上司と部下がコミュニケーションを取りやすいような環境づくり、体制づくり、さらにはチャレンジをサポートする体制づくりを、会社としてこれからも整えていくことが大切だと思います。
また、当社はグループ会社も多くあるので、各社の連携を深めていくことも大切だと考えています。それぞれ得意な分野や事業の特徴が異なるので、お互いに良い部分を取り入れていくことで刺激し合い、成長していけると良いですね。