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ニッチ産業で富山から世界へ。商品開発のヒントは現場にある。

株式会社トヨックス
代表取締役社長 中西 孝夫

更新日:2024年12月25日

富山県黒部市生まれ。早稲田大学 第一文学部 日本史専修 卒業。
1992年 OA機器の卸商社入社(東京) 管理部門に配属。
1995年 株式会社トヨックス入社。
2013年 アセアン工場立ち上げメンバーとしてタイへ赴任。
2024年 代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

海外ビジネスへの挑戦をきっかけに地元・富山へUターンを決意。

トヨックスは、工業・産業用耐圧樹脂ホースと専用継手の製造・販売を手がける会社です。1963年、富山県黒部市で「東洋化成」として事業をスタートし、60年以上にわたりお客さまのご要望や現場の課題に応えるオンリーワンの商品・サービスを提供してきました。ゴムホースと比べて耐圧樹脂ホース市場はニッチな業界ですが、日本国内では7割近いシェア (自社調べ)を獲得しています。

黒部市で生まれ育った私は高校卒業まで地元で過ごし、大学進学を機に上京しました。富山への帰郷は考えておらず、東京でOA機器の卸商社へ就職。もともとは営業職を希望していましたが、配属は管理部門でした。そこでキャリアを形成することになったものの、営業に対する想いが日増しに強くなっていきました。

そこで当時トヨックスの社長だった父に相談したところ、「海外に工場を作るプロジェクトがある」と聞き、前職で3年ほど働いた後に富山へのUターンを決意しました。

徹底した現場主義を実践!海外営業の経験はかけがえのない財産。

1995年、26歳でトヨックスに入社。最初の仕事は海外工場設立プロジェクトメンバーとしての設立調査活動でした。それ以来、海外営業として東南アジアを中心にさまざまな地域に足を運んだほか、国内の営業企画・販売企画や新商品の特販チームなどにも所属して経験を積みました。

残念ながら入社当時の海外工場プロジェクトは中止となりましたが、その後2013年にはタイ工場を設立し、立ち上げメンバーとして4年間タイへ赴任しました。

当社と海外との接点は、中国や東南アジアに進出した日系工場の設備機器に当社のホースが取り付けられていたことが始まりです。現地の工場でホースを交換する際に「今と同じものがほしい」と問い合わせをいただいたのがきっかけで、およそ50年前に海外でのビジネスをスタートしました。

海外営業時代の最も印象に残っている経験は、現場のニーズに基づいた新規市場開拓に携わったことです。インドネシアのジャングルにある食用油農園まで3日がかりで行き、実際どのようにホースが使われているのかを見せてもらいました。

また、アジア各地の食用油加工工場も多数訪問し、さまざまな要望や悩みを持ち帰って、開発チームとともに新商品を作ったのは非常に学びの多い経験でした。

エンドユーザーの声を聴く、トヨックスの「ものづくりの流儀」。

実際に足を運んで現場の課題やお客さまの声を集めることは、当社で昔から大切にされてきた考え方です。もちろん現地の代理店経由で「こういうニーズがある」と聞くこともできますが、それではややもすると時間がかかってしまいます。BtoBの商流であっても、エンドユーザーからできる限りダイレクトに現場の声をうかがう精神は、創業当時から大切に受け継がれてきました。

例えば大手飲料メーカーでは、飲食店向けのドリンクサーバーの機材一式を当初は海外から輸入して使っていました。当然ホースも海外製でしたが、日本のお客さまから「ホースのにおいが飲み物に移っている」という声が寄せられたそうです。その相談を受けた当社が試行錯誤の末、におい移りしにくいホースの開発に成功し、今ではその大手飲料メーカーの認定商品として活用いただいています。

また大手自動車メーカーでは、エア配管からの空気漏れによってコンプレッサーが無駄に稼働しており、電気代がかさんでいるという課題がありました。無駄な稼働をなくし、生産活動を効率化するために現場でさまざまな調査を重ね、専用ホースと継手を開発して取り換えたところ、年間約1,500万円の電気代が節約できました。

工場の隅々までプロの目でチェックし、安心と効率化を実現。

お客さまの工場で課題を発見するために、当社では「ホースドクター」という取り組みを実施しています。当社だけでなく代理店や販売店の営業員にも「ホースドクター」の資格を取得してもらい、エア漏れを検知する機械を使ってホース配管の不具合をチェックするなど、プロの目で見ることによって、さまざまなホースまわりのトラブルを未然に防ぐ提案ができるようになりました。

生産品に関係なく、ほとんどの工場では何かしらのホースが使われています。ただ工場によっては、数百カ所にものぼる膨大な数のホースをお客さまだけではチェックしきれません。

そこで当社の「ホースドクター」が工場全体の配管を診てホースと継手をリストアップし、最適なご提案をしています。また、お客さまからいただいた要望や課題を新商品やサービスの開発にもつなげています。

今後もさまざまな業界のお客さまと信頼関係を深めていき、「ホースのことならトヨックス」と頼っていただける存在であり続けたいと思います。

社員の挑戦したい気持ちを後押し!成長を支える仕組みづくり。

当社は国内に4つ、海外4か国に営業拠点を持ち、製造工場は国内外に3箇所あります。この30年で社員は100名ほど増え、売上も70億円から約100億円まで伸ばしてきましたが、まだまだ成長を続けるためにさまざまな人材を仲間に迎えています。

当社が一緒に働きたいのは、成長意欲を持つ方です。会社の成長は社員の成長なくしてありえませんし、ホース業界も海外からの安価な商品が多く入って価格競争が始まっています。その中でお客さまに選ばれる企業であり続けるためにも、「自分を成長させたい」という強い気持ちを持つ方にぜひ来ていただきたいです。

5年ほど前から、全社員に「ランクアップノート」を書いてもらう取り組みを始めました。これは日次・週次・月次でそれぞれがチャレンジしたいことを記入して振り返るためのノートで、それをもとに上司と定期的に1on1の対話を実施しています。

始めた当初は難しそう、時間がかかりそうといった反応もありましたが、今はだいぶ定着して社員の自発的な取り組みに結びつける形で運用しています。実は社長の私も毎日いろいろと書き込んでいるんですよ。

ランクアップノートによって、個人がどんな目標を持っているのか、今の達成状況はどうなのかが共有できるようになりました。頑張っている人にはそれに見合う評価と報酬が出せるようになり、昇級・昇格の際も自己評価と上司の評価の二つの観点から判断でき、お互いがより納得できる人事制度に進化してきた実感があります。とはいえ、まだ改善点が多くあるため、社員の声を聞きながら少しずつ良くしていきたいと考えています。

ナンバーワンのその先へ!トヨックスが挑む新時代の戦略。

近年のプラスチックホース業界は海外製の安価品が市場に入り始め、今までのように「モノがいい」という理由だけで採用いただくのは難しくなっています。当社は現在、国内市場ではナンバーワンのご支持・シェアをいただいていますが、その上にあぐらをかいているとすぐに追い越されてしまうという健全な危機感を持ちながら経営に向き合う毎日です。

価格競争に巻き込まれないためには、お客さまと信頼関係をつなぐことが不可欠です。当社が創業当時から大切にしてきた「現場を訪問し、お客さまのお困りごとを直接聞き取る」プロセスがますます重要な意味を持つと考えます。

ここ数年で入社した中途採用のメンバーの中には「トヨックスの方が職場の風通しがよく、やりたいことがやれそうだと感じて入社を決めた」という社員もいました。当社では、きちんと方針を示した上で仕事を任せる風土があります。そこにやりがいを感じてくれる社員が多いのは嬉しいことです。

当社は今後も新しい業界への参入や、海外を含めた新しいエリアの開拓をさらに進めていきます。その中でお客さまのお役に立ち、長きにわたって必要とされる商品を開発し、付加価値のあるサービスの提供を追求するのがトヨックスの使命です。そんな働き方に魅力を感じていただける方は、ぜひ仲間になって一緒に事業を成長させていきましょう。

編集後記

コンサルタント
腰本 延由

シャワーホースや水まき用の散水ホースなど、ほとんどのご家庭にホースはあると思いますが、皆さんが使っているホースもトヨックス社で作っている製品かもしれません。またファストフード店やコンビニ、ファミレスの飲料ディスペンサーや、さまざまな工場の産業用ホースとして使用されるなど、社会の血管のような役割を果たしているのがトヨックス社のホースです。

そのような会社が富山県にあるということを、富山県民としても誇らしく思います。今回社長のお話を伺い、社長が大切にされている、徹底した現場主義とエンドユーザーの声を聴く姿勢が会社全体のDNAになっていることに感銘を受けました。

新しい分野に積極的に進出し、成長を加速させる同社で活躍したいという成長意欲の高い方はぜひご相談ください。

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