データと技術で工場を変える。現場第一で拓く日本の製造業の未来。
アットフィールズテクノロジー株式会社
代表取締役社長 顏 懋祥
台湾生まれ。国立成功大学 大学院修了。
1993年 ウィンボンド・エレクトロニクス株式会社入社。
2013年 台湾台中工場 工場長、2019年 台湾高雄工場 工場長を歴任。
2023年 アットフィールズテクノロジー株式会社 代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
社名に込められた「現場に根ざすサービス提供」へのこだわり。
アットフィールズテクノロジー株式会社は、製造工場のスマート化を総合的にサポートする会社です。社名の由来は、場所を表す「アット」と現場を表す「フィールド」を組み合わせた造語で、半導体を中心としたものづくりの現場において「現場に根付いたお客様への貢献」という当社の情熱が込められています。
2000年の設立当時、当社は松下半導体エンジニアリング株式会社という、松下電器産業株式会社の関係会社でした。2020年に台湾に本社を持つウィンボンド・エレクトロニクス株式会社のグループ傘下に入った際、社名をアットフィールズテクノロジーに変更しました。
当社の事業の柱としては、三つの部門があります。一つ目が工場のインフラシステム構築およびソフトウェア開発を手がけるIT(インフォメーションテクノロジー)、二つ目がデータ収集とデータ解析を行うDS(データサイエンス)、三つ目は半導体プロセスと設備の開発を行うIE(インダストリアルエンジニアリング)です。
富山県魚津市の本社と砺波市の事業所、そして新潟県・京都府の事業所の計4拠点を持っています。
日本の製造業の遅れを取り戻す。アットフィールズテクノロジーの挑戦。
私は台湾の台北出身で大学・大学院では電子工学と半導体を専攻しました。そして1993年にウィンボンド・エレクトロニクスにエンジニアとして入社し、私の半導体に関わるキャリアが始まります。
最初は台湾の中でも半導体で有名な新竹の拠点で働き、その後は東芝の大分工場や四日市工場で研修生になりました。当時、ウィンボンドと東芝は半導体分野で連携しており、世界一の日本半導体から多くのことを学びました。
2004年にはドイツで半導体を扱うインフィニオンへ移るなど、若い頃は海外で働く機会が多くありました。その後ウィンボンドへ戻り、2013年からは台中工場の工場長、2019年には高雄工場の立ち上げから工場長を務めたのちに日本へ来て今に至ります。
アットフィールズテクノロジーの最も大きなミッションは、日本の製造業の「失われた30年」を取り戻すことです。当社が持つITやDSおよび半導体プロセス・設備技術を組み合わせて、幅広いソリューションが提供できる組織づくりを進めています。
世界の進歩は待ってくれない。三つの部門で挑む、事業拡大の最前線。
アットフィールズテクノロジーの大きなミッションを達成するために、当社が乗り越えるべき課題は数多くあります。まずシステム構築・ソフトウェア開発を行うIT部門では、人手不足の解消が喫緊の課題です。
日本の企業の多くはDX化を推進したいと考えていますが、現状ではその要望に応えるためのエンジニアが足りません。加えて、従来のリソース提供のビジネスモデルから、価値提供のモデルへと転換する必要があります。
そしてデータ収集・解析を行うDS部門では、技術者をより多く確保・育成する必要があります。私が日本のデータサイエンス技術に触れて感じるのは、世界に比べると3~5年ほど遅れているということです。
そこで当社ではウィンボンド本社に技術者が出張し、OJTでAIスキルを習得し、その知識を日本の企業に活用できる機会を多く設けています。日本ではさまざまな企業が「DXを進めたい」と考えている一方で、データサイエンスの技術・経験が不足していると感じます。
大手企業を含めてDSの専門部署がある会社は少ないため、そこにビジネスチャンスがあります。今後は技術者を高いレベルへと育てながら、幅広い日本企業にDSサービスの価値を伝え、DSによって生まれる経営効果をより実感するお客様を増やしていくことが目標です。
最後に半導体プロセス・設備の開発を行うIE部門が展開しているのは、半導体の技術を他の会社に提供するサービスです。グループ企業はもちろん、自動車や家電などの大手企業にも半導体プロセス・設備技術によるサービスを提供していますが、半導体技術を持つ日本のエンジニアが少ない点が常にネックとなっています。
今後はお客様先のエンジニアの教育や、コンサルタントのような立ち位置で大きな価値を提供する未来を見据え、徐々にサービスを拡大している段階です。IT/DS/IE部門のそれぞれの課題に対応するためには、優秀な人材が不可欠だと考えます。
成長意欲のある人材とともに、製造業の未来をつくりたい。
当社は各部門でそれぞれ求めるエンジニア像があります。IT部門では、主に工場の生産ラインを安定稼働させるためのITインフラ構築・運用が担当業務となります。ITエンジニアは今も不足しているため、これらの知見がある方はぜひ仲間になっていただきたいですね。工場の生産管理や品質管理、自動化などに伴うソフトウェア開発、またサーバーやネットワークなどのインフラ設計にやりがいを感じる方には、挑戦できる場が多くあります。
DS部門では、ものづくりや品質改善の経験を通してデータを扱ったことがある方を迎え入れたいと考えています。データサイエンスの経験はなくても、工場の業務全般やそこで扱われるデータに理解がある方なら、データサイエンスの教育を受けてキャリアアップができるはずです。当社で新しい知識を身につけてデータ解析などをやってみたい方にはぴったりです。
そしてIE部門で求めているのは、半導体技術や設備技術を活用して仕事がしたい方。半導体や設備の開発に興味を持った人であれば、OJTや現場で働くことを通して、お客様にサービスが提供できる人材へと成長できるでしょう。
これから仲間になる人材に対して、時間をかけて育てることを想定しています。新しい分野にも臆せず一緒に成長していける人材がいれば、進化し続ける半導体業界で再び日本の地位を取り戻せるでしょう。
高付加価値のサービスを提供し、より力強い“技術パートナー”へ。
当社はもちろん、親会社であるウィンボンドも含めて「アットフィールズテクノロジーの技術とサービスによって、日本の失われた30年を取り戻したい」という強い熱意を持っています。非常に難しいことですが、私たちは挑戦する価値のある目標だと前向きにとらえています。
そのためには日本のIT/DS/IEのエンジニアを数多く育て、より付加価値の高いサービスを創出しなければなりません。特にIE部門のサービスを通じて感じるのは、新しい製造設備を開発してほしいというニーズが高いことです。
IEサービスではエンジニアがお客様の工場に入って仕事をするため、その工場にどのような困りごとがあるのかを肌で感じられるという特徴があります。そこで見つけた課題に対して、当社のITやDSサービスを使って解決できるはずです。
そういったチャンスを見逃さず、お客様の声に寄り添うことが高付加価値なサービスを生み出す鍵になると捉えています。
当社のビジネスは現在、グループ企業との取引がおよそ7割を占めていますが、会社を成長させるには外販を拡大する必要があります。今は3割の外販を2025年の計画では4割、そして2030年には外販とグループ内売上を5割ずつにする目標を掲げ、日々前進しています。
今後も半導体技術をベースに「ものづくり革新」を実行する技術者集団として、お客様の経営を改善に導く強力なパートナーシップを発揮しながら、社会に貢献し続ける企業を目指して邁進し続けます。