企業TOPインタビュー

「創造と奉仕」の風土が息づく会社。目指すは世界のニッチトップ企業。

富士化学工業株式会社
代表取締役社長 西田 洋

更新日:2025年8月27日

富山県生まれ。獨協大学・Bond大学大学院卒業。
2009年 医薬品・医療機器販売会社へ入社。
2011年 富士化学工業株式会社入社。
2019年 代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

家業を外から見たことで新たな興味が芽生え、事業承継を決意。

戦後まもない1946年、富士化学工業はパン用イースト菌を製造する会社としてスタートしました。しかし業績が思うように伸びず、「人々のためになるものを提供したい」と考えた創業者は、元陸軍薬剤官を自社に迎えました。

そして1954年、さまざまな研究を経て副作用の少ない胃病の薬「ノイシリン(R)」の開発に成功します。ノイシリン(R)は現在、世界を代表する制酸剤(胃酸を中和し胃粘膜を保護する薬)として知られ、当社の製薬メーカーとしての歩みもここから始まりました。

私は創業家に生まれ、父が経営層として家業に携わる姿を幼少期から見てきました。子どもながらに漠然と「私もいつか会社を継ぐのかな」と考えつつ、大学卒業後はすぐに家業へ入らずに医薬品・医療機器販売の外資系企業に就職。家業と同じメーカーで働いてみたいと考えていたこともあり、その会社に決めました。

外資系企業では病院を相手にした営業職でしたが、富士化学工業が販売するサプリメントが置かれていたり、富士化学工業がお世話になっている大学の先生の名前を聞くこともあったりと、「今の仕事と家業とではこういう共通点があるのか」と改めて発見する場面があり、徐々に家業への興味が大きくなっていきました。

現場での学びと異文化での挑戦が育てた、経営者としての視座。

家業に入ってからは関連会社へ出向したり、営業職として医療機関向けにアスタキサンチン(健康維持や美容をサポートする抗酸化物質)のサプリメントを販売業務に従事しました。

通常、医師は医薬品を使って患者さんの治療にあたるため、医薬品であれば比較的安定して販売先を確保できます。しかし、サプリメントは興味を持ってくれる医師の開拓から始めなくてはなりません。

ターゲットを探すところから取り組む難しさもありましたが、上手くいったときや喜んでいただけたときは大きな手ごたえを感じました。

そうして3年ほど経った2013年秋、さらに経営学を勉強するためにオーストラリアへの留学を決意。もともと経営学に興味がありMBAを通信教育で修了していましたが、仕事で英語を使いつつ経営学を深めたいという想いがありました。

経営学と語学、そして将来的なグローバル展開を見据えてオーストラリアに渡り、2年ほど学んだあと日本へ戻りました。帰国後は富士化学工業の経営企画の仕事に携わり、アスタキサンチンを新薬として開発する事業会社での活動や富士化学工業の経営全般に関わるなど、忙しい日々でした。

この頃には少しずつ「私が社長になったらこういうことがしたい」という展望も生まれつつありました。これからの自社にとって何が必要なのかを常に考えていた時期だったと思います。

経営を学ぶ中では、アメリカの関連会社での経験も貴重なものとなりました。当時立ち上がったばかりの現地組織で、ナンバー2として50名ほどをまとめる役割でしたが、日本人は4人だけで残りはすべて外国人のチームです。

文化の違い、言葉の違い、働き方の違いといった壁にぶつかりながら、みんなで悪戦苦闘しつつ業務を行っていました。その後、日本に戻り2019年に代表取締役社長を受け継ぎました。

33歳で挑む経営再建。グループ再編・事業見直しで最高益を達成。

私が代表になった当時は、経営状態が芳しくなく短期間での会社の立て直しが喫緊の課題でした。全てが初めての経験でかなり不安な気持ちでしたが、社員が不安にならないように短期間で会社を再生させ、業績を回復させることに注力しました。

そのとき33歳だった私にとってはとても重圧のかかる経営環境で、時に事業撤退やグループ会社を整理するといった決断に迫られる場面もあり、1年ほどかけてグループのダウンサイズや中核事業の取捨選択を行いました。

1年でほとんどの事業整理は終わり、当社史上最高益を達成。最近は成長軌道に乗ったことで、私も社員も「これで大丈夫だ」という感覚が戻ってきたように思います。余裕が出たことで、中長期目線でどんな会社にしていきたいのかというフェーズに進めるようになりました。

加えて、コロナ禍ではアビガン(抗ウイルス薬)の原薬を製造していたのですが、「日本のために、患者さんのために働こう」という使命感が社内に満ちていました。

今振り返ってみれば、コロナ禍の出来事があったからこそ私たちの働く目的が改めて明確になり、全員で一丸となって進むことができました。この経験も会社を立て直す一助になったと感じています。

誠実さと好奇心が未来を拓く。富士化学工業が求める人材像とは。

当社は求める人物像として、次の5つのキーワードを定めています。「社是である『創造と奉仕』に共感していること」「誠実さ」「チームワーク」「チャレンジ精神」「継続的な努力」、これらは新卒・中途採用いずれにおいても大切にしている柱です。

中でも最も重視するのは、誠実であること。どのポジションであれ、薬や健康食品を扱うメーカーとして誠実さはすべての社員に必須のものです。また、誠実であることは人を大切にすることにもつながり、お客さまだけでなく社内の人間関係も円滑にしてくれます。

加えて、チャレンジ精神を持って仕事に向かう方もぜひ仲間になってほしい人材です。幅広いことに興味を持ち、探究心を発揮しながら新しいチャレンジに飛び込める好奇心旺盛な方は、逆境にあってもきっと前向きに取り組めるのではないかと思います。

中途採用から役職者になった人が多いのも当社の特長で、役員ではおよそ4割、部長級では3割ほどが中途入社です。医薬品メーカーを経験していなくても、好奇心がある方はどんどん努力して管理職になって活躍しています。

他社を見た経験をもとに当社に良い風を吹かせてくれる方や、自ら主体的に動いて機会を作り出しアクションできる方とぜひ一緒に働きたいですね。

「受け身」から「創造」へ。自ら市場を切り拓く組織への転換。

過去20年の富士化学工業は、医薬品の受託事業を主軸としてきました。お客さまから「この製法でこんな新薬を作ってほしい」とレシピの提供があり、それを販売できるものにするのが当社の主な役割です。

しかし、受託事業ばかりではどうしても組織が受け身になりやすく、世の中や業界の変化から取り残されてしまう可能性があります。そこで私は「自分たちで製品を作れるようになる必要がある」と役員たちに話し、代表になって製剤領域の事業にリソースを振り向けるようになりました。

お客さまの製法(オーダー)通りに仕事をするのではなく、市場・競合環境を自分たちの目で見て「この技術・製法であれば、この分野にチャンスがありそうだ」と判断できる組織を作ろうと思いました。

もともと当社は、スプレードライの受託事業進出、新薬開発への挑戦、アスタキサンチン事業への挑戦と独創的な事業創出をしてきた会社です。ただ、この20年ほどは受託事業が中心となって、自分達で事業を創り上げていくんだというマインドが薄れてきていることに危機感を持っていました。

受け身の状態から創造的な社風にしていくのは非常に大きな転換でしたが、今ではかなり現場の雰囲気が変わってきたと感じています。売上の構成比を見ると、2019年以前は受託事業が7割でしたが、今では2割になりました。残り8割が自社製品になっています。

もちろん、ドラスティックに事業の中身を変えたことで新たな課題が生まれるため、現場での仕事の内容は大きく変化してきています。変化を促してきたことで少しずつ社員のマインドが変わり、組織としてレベルアップしてきた感覚があります。

私は代表として、明確な方向性を出したうえで「失敗してもいいからやってみよう」という環境づくりを意識しています。それに応えてくれる社員のおかげで、短期間で複数の新技術へ挑戦するなどの成果が表れています。

高い技術力と諦めない力がある社員がいるのは、先代・先々代の時代に数多くのことに挑戦してきた歴史と、そのDNAが引き継がれているからにほかなりません。

80年で培った専門性・創造性を礎に富士化学工業が拓く未来。

これからも当社が目指すのは、ニッチトップ企業です。富士化学工業はスプレードライ(微細化した液体を噴霧し、瞬時に溶媒を蒸発させて粉末を得る技術)で知られていますが、まだまだ医薬品会社や製薬会社にはそれ以外の魅力が伝わっていない部分もあります。

すぐに達成できる目標ではありませんが、お客さまの課題を丸ごと任せてもらえる、あるいは私たちの製品が一番だと思ってもらうための体制づくりは、今後も続けていきます。

加えて当社は、アスタキサンチンの原料供給においてグローバルシェアのトップとなっています。今後もグローバル領域でしっかりと存在感を示し、シェアを拡大できるような尖った会社でいたいですね。

創業からおよそ80年にわたり、私たちは「創造と奉仕」を社是とし、人々の健康に貢献する製品をつくりたいとの思いで事業を拡大してきました。

医薬品に加えて健康食品なども開発・製造し、病気の予防から治療まで幅広い領域を手がけており、社内の業務にはまだ見ぬチャンスやチャレンジがあふれています。

近年取り組む、独自のコア技術に付加価値を付ける活動を続けていけば、ニッチトップ企業という目標も十分に達成できると考えています。

すでに形が見え始めたものもあり、それらを確固たるものにして「この領域でこの課題を解決できるのは富士化学工業」と認知される企業を目指し、今後も力強く進んでいきます。

編集後記

チーフコンサルタント
腰本 延由

33歳という若さで社長に就任し、経営再建という重責を担った西田社長。その歩みは単なる事業承継ではなく、挑戦の連続でした。

外資系企業での経験、海外MBA留学、異文化の中でのマネジメント。それらを経て培われた視座が富士化学工業の未来を切り拓く原動力となっています。

印象的だったのは、トップダウンではなく「社員の挑戦を支えるボトムアップ型」の経営スタイル。失敗を恐れず挑戦できる環境づくりに注力する姿勢が社内に前向きな空気を生み出していました。

受託型から創造型への転換、ニッチトップを目指す戦略、そして誠実さと好奇心を重視する人材観。西田社長の言葉には、富士化学工業の魅力と可能性が詰まっていました。今後の展開がますます楽しみです。

関連情報

富士化学工業株式会社 求人情報

2025.08.15

医薬品メーカーの品質保証業務(薬剤師)/富士化学工業株式会社

2025.08.15

医薬品メーカーの製剤開発(開発~工業化検討)/富士化学工業株式会社

2025.08.15

医薬品メーカーの製剤開発(工業化検討)/富士化学工業株式会社

2025.08.15

医薬品メーカーの品質保証業務担当(食品添加物・健康食品の品質保証)/富士化学工業株式会社

2025.08.15

医薬品メーカーの研究開発職(藻類の培養技術開発)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの製造職(管理職候補)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの財務経理(メンバー)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの財務経理(管理職候補)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの社内SE/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの生産技術(工業化研究)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの薬剤師(理系総合職)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの研究開発職(部長候補)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの製造オペレーター(未経験可)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの製造オペレーター(医薬品製造経験者)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの製造職(リーダー候補/製造リーダー経験者)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの製造職(リーダー候補/医薬品製造リーダー経験者)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの設備保全(ユーティリティ)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの製剤開発/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの製剤開発(品質分析及び分析法開発)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

管理部門総合職(将来幹部候補)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの製剤開発(工業化検討)/富士化学工業株式会社

2025.08.12

医薬品メーカーの人事/富士化学工業株式会社

企業TOPインタビュー一覧

ページトップへ戻る